B-CASカードの不正改造に手を染める人々が抱く最大の思い込みが、「双方向通信のケーブルを繋がず、スタンドアローンでテレビを見ている限り、電波を受信するだけでこちらから情報を発信しないため特定されない」という理屈です。たしかに、放送衛星から送信される電波(ダウンリンク)を受け取るだけの状態では、テレビ受像機から直接「いま不正なカードで視聴している」という信号が放送局へリアルタイム送信されるわけではありません。
しかし、発覚の引き金は「電波の送受信」以外の物理的な捜査ルートに存在します。不正視聴を行うためには、暗号鍵(ワークキー:Kw)を不正に書き換えるツールを入手するか、すでに書き換え済みの「BLACK CASカード」と呼ばれる違法カードを購入しなければなりません。この入手プロセスの段階で、氏名、住所、振込口座、IPアドレス、フリマアプリの取引履歴といった明確な個人情報がデジタルフットプリントとして確実に記録されています。
つまり、電波を通じてバレるのではなく、「カードやツールを入手した商流の追跡」によって足元をすくわれるのが現実です。電波の仕組み上は追跡できなくても、社会的な流通経路から個人の特定へ至る包囲網が張り巡らされています。