「母」としての情愛と、「君主」としての冷徹な責務。その狭間で苦悩したのが、当時のエリザベス2世だった。スキャンダルの過熱に伴い、王室の存続そのものが脅かされる事態に対し、君主が下した決断は容赦のないものだった。
長男であるチャールズ皇太子(当時)やウィリアム王子らの強い進言もあり、王室は組織防衛のための緊急手術に踏み切る。殿下(HRH)の称号使用停止、名誉軍職の返上、そして公的慈善団体のパトロン職からの解任。それは実質的な「王室追放」を意味していた。バッキンガム宮殿の奥深くで交わされた協議は緊迫を極め、伝統と血縁を守ることよりも、国民の信頼を回復することが最優先された。愛息を守りたい親心よりも、千年続く王室の威信を守る制度の冷酷な一面が浮き彫りとなった瞬間だった。