英語教育の現場において、不可算名詞(数えられない名詞)としての「hair」と可算名詞(1本、2本の毛)としての「a hair」の違いを教える例文は定番の文法トピックです。一般的に頭髪全体を指す場合は「hair」を用いますが、これを初学者向けの基礎的な疑問文「Do you have ~?」に当てはめた結果、機械的に「あなたは髪の毛がありますか」という怪文が誕生してしまいました。
英語圏の日常会話であれば、「Do you have long hair?(髪は長いですか?)」や「What is your hair type?(どんな髪質ですか?)」のように修飾語を伴うのが自然です。しかし、入門段階の単語テストなどで不要な要素を削ぎ落とした結果、まるで「頭髪の有無そのもの」を単刀直入に尋ねるような違和感のある日本訳が出来上がってしまいました。
かつて学校の英語教科書に載っていた「This is a pen.(これはペンです)」と同様に、文法的には正しくても実用性に欠けるシュールな例文の代表格として、学習者の記憶に刻まれることになったわけです。