本作に対する国内外のコミュニティの評価は、極めて熱狂的であると同時に、ミステリーファンならではの鋭い賛否が交錯しています。Goodreadsや大手映画レビューサイト、国内SNS(Xや読書メーター)に寄せられた生の声や議論を検証すると、読者や視聴者がどの部分に強いカタルシスを感じ、どこに違和感を覚えたのかが浮き彫りになります。
好意的な意見として最も多く見られるのは、「クラシックな密室劇の設定を現代のサイコスリラーに落とし込んだ構成の妙」です。「アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』や『オリエント急行殺人事件』を彷彿とさせる贅沢な密室感でありながら、主人公がSNSやスマホの通じない洋上で孤立していく過程がリアルで怖い」という声が多数を占めます。また、映画化におけるキーラ・ナイトレイのキャスティングに対しても、「神経質で傷つきやすく、しかし芯の強いヒロイン像にこれ以上ない適役」と賞賛が寄せられています。
一方で、手厳しい批判や議論を呼んでいるポイントも存在します。特に原作読者の間で長年指摘されてきたのが、「主人公ローラの軽率とも取れるスタンドプレーに対するストレス」です。SNSやレビュー掲示板では、以下のような率直な意見が投稿されています。
「精神的に不安定で不眠症とはいえ、アルコールと処方薬をちゃんぽんした状態で単身危険な相手に突撃していく主人公に、途中で苛立ちを覚えた」
「周囲の乗客やクルーが主人公を徹底して異常者扱いする描写が長すぎて、読んでいて息が詰まりそうになった」
しかし、こうした「読者の居心地の悪さ」こそが原作者ルース・ウェアの狙いでもあります。主人公が完璧な名探偵ではなく、欠陥を抱えた一人の傷つきやすい人間だからこそ、読者は「自分が同じ状況に置かれたら正気を保てるだろうか」という当事者意識の恐怖に直面させられます。