四半世紀以上にわたるシリーズの歴史の中で、ファンの間で幾度となく「碇シンジの声優が交代するのではないか?」という噂や憶測が飛び交った時期がありました。
この交代説が浮上した背景には、主に2つの要因が存在します。1つ目は、テレビシリーズ終了から『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズが始動するまでの長いブランク期間と、緒方恵美自身が過去に患った重度の体調不良や療養期間が重なったことによるファンの不安です。過酷極まりないシンジ役を再び演じ切ることができるのかという懸念が、一人歩きして交代説というデマに変貌しました。
2つ目は、シリーズ完結作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のラストシーンにおける演出です。物語の結末、成長した大人のシンジが駅のホームで立ち上がるシーンにおいて、俳優の神木隆之介が声を担当しました。この鮮烈なサプライズに対し、一部の視聴者が「声優が交代してしまったのか」と早合点したことが、ネット上での検索急増に繋がりました。
しかし、これはあくまで「エヴァンゲリオンの呪縛から解き放たれ、大人になったシンジ」を表現するための演出上のギミックであり、シンジの魂そのものを演じ抜いたのは紛れもなく緒方恵美本人です。交代説は、それだけ緒方恵美のシンジ像がファンの心に不可侵の領域として深く根付いていた証拠でもあります。