検索エンジンで「伊吹島 フェリー」と入力する旅行者が最も困惑するのが、車積載に関するルールです。船名に「フェリー」と冠されることが多く、船首側に可動橋のような形状が見られることから「乗用車を積めるはずだ」と誤認されがちですが、伊吹島フェリー車乗せられない理由には、船体の物理的制限と島特有の生活空間構造という2つの明確な背景があります。
第1に、現在の就航船「ニュー伊吹」は純粋なカーフェリーではなく、旅客および生活必需物資の輸送を主目的とした小型貨客船に近い構造です。甲板上の小スペースは、島民の生活物資、郵便車、緊急車両、インフラ工事用軽トラックなどの積載で日常的に埋まっており、一般の自家用車やレンタカーを積み込むスペースは一切確保されていません。
第2に、仮にマイカーを伊吹島へ持ち込んだとしても、観光客が運転できる道路が島内に事実上存在しないという地理的必然性があります。伊吹島は周囲約5.4キロメートルの小島で、港から集落へと続く道は最大傾斜15度以上の極めて急峻な坂道(通称「心臓破りの坂」など)です。集落内の路地は軽自動車同士のすれ違いすら不可能な幅員約1.5〜2メートル程度しかなく、石垣が連なる迷路状になっています。島民が日常の足として活用しているのは原付バイクや超小型の荷搬車(バタバタ)のみであり、外部からの車両流入は集落交通の麻痺や重大事故を招くため、観光客の車両航送は頑として認められていません。