かつての市川猿之助 (四代目)は、伝統芸能の枠組みを次々と打ち破る革新者として絶大な支持を集めていた。歌舞伎の伝統的な手法を継承しつつも、現代的なエンターテインメントへと昇華させる手腕は天才的であり、古典の舞台のみならず多方面で才能を発揮していた。
とりわけ大きな話題を呼んだのが、大ヒットマンガを舞台化した『スーパー歌舞伎II ワンピース』である。ルフィ役をはじめとする役柄を一人で何役も演じ分け、宙乗りや劇的な演出で若者や海外の観客までも魅了した。この作品は、停滞気味だった劇場に新たな客層を呼び込み、劇評家からも極めて高い評価を獲得した。
さらに彼の名は、テレビドラマの世界でも一躍全国区となった。TBSテレビで放送された大ヒットドラマ『半沢直樹』での圧倒的な悪役演技は、視聴者に強い印象を残した。濃密な顔芸と迫力ある台詞回しはネット上で社会現象となり、Amazon Prime Videoなどの配信プラットフォームを通じた見逃し配信でも爆発的な再生数を記録。まさに芸能界の頂点へと駆け上がっていた時期であった。