何より舌を巻いたのは、歌舞伎が持つ古典表現の圧倒的な応用力だ。世界を脅かす災厄「シン」や空間を舞う幻光虫といったSF的な要素を、単なるLED映像に頼り切るのではなく、黒衣の手さばきや毛振り、伝統的な大道具の仕掛けで見事に表現してみせた。デジタルとアナログのハイブリッド表現は、当時の劇評家たちを大いに唸らせた。
劇中の球技「ブリッツボール」の描写も秀逸だった。アクロバティックな殺陣と宙乗りを巧みに組み合わせ、無重力の水中で躍動する選手たちのスピード感を立体的に再現。物理的な制約を逆手に取った工夫と知略が、舞台狭しと炸裂していた。