後年の調査報道およびネットログ解析によると、「ヤシマ作戦」という言葉を節電の文脈で最初に投稿したのは、アニメファンである匿名の一般Twitterユーザーたちでした。3月11日深夜から12日朝にかけ、「東京電力を救うためにヤシマ作戦を発動しよう」「使わない家電のコンセントを抜いて電力を被災地に送ろう」という趣旨のツイートが複数投稿され、ハッシュタグ「#ヤシマ作戦」とともに猛烈な勢いでリツイートされていきました。
情報の伝播は単なるテキストの拡散にとどまりませんでした。有志のクリエイターやイラストレーターが、劇中の特務機関NERV(ネルフ)の発令所を模した緊急グラフィックや、「ピーク時間帯の節電」を呼びかけるポスター画像を即座に作成。視覚的にわかりやすく洗練された画像データは瞬く間にブログや掲示板へ転載され、普段アニメに馴染みのない層や高齢者層へもスマートフォンの画面越しに浸透していきました。
この民間主導のうねりに対し、著作権元であるアニメーション制作会社スタジオカラーおよび関係者も極めて迅速かつ柔軟に対応しました。主人公・碇シンジ役の声優・緒方恵美氏や葛城ミサト役の三石琴乃氏が自身のSNSやブログで被災地への祈りと節電への協力を呼びかけたほか、スタジオカラー公式ブログも「ヤシマ作戦」に言及。公式側が権利侵害として排除するのではなく、「節電の啓発につながるならば」と事実上の公認を与え、公式Twitter等を通じて節電ポスター素材の利用を後押ししたのです。
公式の寛容な後押しを得たことで、ムーブメントは個人のネットミームの域を超え、公共性の高いソーシャルアクションへと昇華。大手メディアや自治体の広報担当者までもが「家庭での不要な照明消灯」を促す際にこの作戦名を引き合いに出すなど、官民の垣根を超えた一大キャンペーンへと成長しました。