神奈川県横浜市港北区。緑豊かなキャンパスに位置する慶應義塾高等学校は、全国からトップクラスの学力を誇る男子生徒が集まる伝統校だ。自由と自己責任を旨とする校風だが、その内実は一切の妥協が許されない厳格な実力主義の世界である。
この場所において、菊池が「芸能人」として特別扱いされることは一度もなかった。周囲にいるのは、数学オリンピックの難問に頭を悩ませる者や、スポーツに青春を捧げる者たち。アイドルとして多忙を極めていた菊池に対しても、同級生たちは容赦のないイジりや軽妙な冗談をぶつけた。浮ついた自尊心を打ち砕くこの男臭い日常が、彼の地に足のついた感覚を育む最高の環境となった。