数あるエピソードの中でも、ファンから満場一致で「別格」と称される恐怖回が存在します。その筆頭が、原作第5巻・アニメ第34話〜第35話で描かれた山荘包帯男殺人事件です。人里離れた吊り橋が落とされ、通信手段も絶たれた嵐の山荘という極限のクローズド・サークル。顔全体を血の滲む包帯で覆い、黒マントを羽織った謎の怪人物が、窓の外から無言で見つめる構図は、多くの視聴者の脳裏に焼き付きました。
この事件における最大の衝撃は、被害者がバラバラに切断された事実と、その遺体の一部を犯人が自身の腹部に巻き付けて「肥満体型」に偽装していたという異様なトリックにあります。アニメ放送時、包帯男が切断された首を抱えて窓際を横切るシルエット演出は、子供向けアニメの境界線を完全に超越していました。
さらに、原作第10巻・アニメ第50話の図書館殺人事件津川館長は、視覚的・心理的ホラーの最高到達点として知られています。行方不明となった職員の捜索を巡り、夜の米花図書館に忍び込んだ少年探偵団を追い詰める津川館長。暗闇の中で眼球だけが異様に赤く光り、不気味な笑みを浮かべながらエレベーターから姿を現す演出は、怪獣や怪物ではない「生身の人間の狂気」をまざまざと見せつけました。エレベーターの昇降機の上に死体を隠すという発想の生々しさは、今なおエレベーター利用時に天井を見上げてしまう後遺症を視聴者に残しています。
そして、原作第20巻〜第21巻・アニメ第136話〜第137話の青の古城探索事件では、好奇心から隠し通路に迷い込んだ江戸川コナンが物語序盤であっけなく襲撃され、昏倒・消息を絶つという絶望的な導入が取られました。主人公不在の中、阿笠博士や歩美、光彦、元太、そして灰原哀が、巨大な城の暗闇で一人ずつ見えざる手に消されていく展開は、スラッシャー映画そのもののサスペンス構造です。老婆(大奥様)の正体が、遺産欲しさに整形手術と声帯模写で成り代わっていた若い元家政婦であり、その執念が明かされるコナントラウマ回真相詳細は、美醜と狂気への根源的な恐怖を観る者に突きつけました。