政治家・小渕恵三を語る上で欠かせないのが、そのあまりにもユニークな素顔だ。内閣総理大臣に就任した後も、彼は一般市民や面識の薄い有識者、時には自分を批判したコラムニストにまで直接自ら電話をかけることで知られていた。永田町では親しみを込めて「電話魔」と呼ばれたほどだ。
夜遅く、突然ベルが鳴り、出ると「小渕恵三ですが」と本人が話しかけてくる。受話器を取った相手は一様に絶句したという。パフォーマンスではなく、生の声を直接聴くことに執着した彼の愚直なまでのスタイル。お茶目でありながら頑固、温厚でありながら勝負所を逃さない。お茶の間に親しまれた「平成おじさん」の柔和な笑顔の裏には、人間に対する深い好奇心と愚直な誠実さが同居していた。