東映が牽引した集団抗争劇や勧善懲悪の時代劇が黄金パターンとされていた時代、狂四郎が提示したアンチヒーローの美学は、日本のテレビドラマ・映画産業全体に巨大な地殻変動をもたらした。
弱者を救うためではなく、ただ己の掟と宿命に従って人を斬る。そんなダークヒーローの原型は、後の刑事ドラマやサスペンス、さらには現代のアニメーション作品に登場する数々の孤高のキャラクター造形へと確実に受け継がれている。
テレビという大衆メディアにおいて、安易な共感を拒絶し、ハイブロウな映像美と文学性を追求し切ったこと。その冒険的な試みこそが、今日の豊穣な映像カルチャーの礎となったことは疑いようがない。