ネット上の保育コミュニティやSNSでは、「『めっきらもっきらどおんどん』は世界観が独特すぎて、子どもが怖がったりセリフを覚えられなかったりして難易度が高いのではないか」という懸念の声が定期的に散見されます。しかし、現役の保育教諭へのヒアリングや実際の公開保育データを検証すると、この言説には明確な誤解が含まれていることが分かります。
児童精神科医や発達心理学の知見によれば、5歳前後の幼児は「ちょっと怖いもの」「異形のもの」に対して強い知的好奇心と共鳴を抱く発達段階にあります。妖怪たちの名前の語感(しっかかもっかか、もんもんびゃっこ)そのものが音韻的におもしろく、意味の通じないデタラメな呪文を連呼すること自体が、子どもたちにとって極上の言語遊戯なのです。
「子どもがセリフを忘れて立ち往生する」というトラブルの大半は、台本を大人の論理でガチガチに固定し、一言一句違わぬ暗記を強要した結果として生じます。登場する妖怪たちのセリフは基本的に短い叫び声や感情表現が中心であり、グループ内で「せーの」と声を揃えて言える台本設計にしておけば、一人が詰まっても周囲が自然にカバーできます。失敗を極度に恐れる完璧主義を捨て、子どもたちの身体的な躍動を主体に据えることさえ徹底すれば、むしろ他の物語劇よりもトラブルが起きにくい構造を持っています。
【プロの結論】おすすめできる園・クラス環境と慎重になるべき条件
本作の導入が圧倒的な成功を収めるのは、「日頃から身体を動かすリズム遊びやごっこ遊びが活発なクラス」です。子ども同士で「おばけごっこ」を楽しめる土壌がある集団では、劇あそびの導入初日から爆発的な盛り上がりを見せます。
一方で慎重な配慮が必要なのは、「大きな音や暗転などの舞台演出に強い感覚過敏・不安感を抱く子どもが多いクラス」です。その場合は、照明を暗く落としすぎない、夜の世界を黒ではなく濃紺や星空のカラフルな装飾で表現する、妖怪のお面を顔全体ではなくカチューシャタイプにして視野と安心感を確保する、といった柔軟な環境調整が必須となります。