大相撲の歴史上、若乃花・貴乃花に代表されるように数多くの兄弟力士が誕生してきましたが、翔猿と英乃海の兄弟関係には独特の深みがあります。通常、兄弟であれば同じ相撲部屋に入門するケースが多い中、兄の英乃海は木瀬部屋、弟の翔猿は追手風部屋と、あえて別々の部屋を選びました。
これについて当時の本人たちや関係者が明かした背景によると、「同じ部屋に入れば、兄に甘えてしまう、あるいは弟として遠慮が生じる」「お互いに自立した一人の力士として、厳しい環境に身を置くべきだ」という明確な信念があったとされています。兄弟でありながらライバル部屋の力士として、本場所の土俵裏で言葉を交わすことはほとんどありませんが、花道のモニターでお互いの取組をじっと見つめる姿が幾度となく目撃されています。
幕内の土俵では兄弟対決は原則として組まれませんが(優勝決定戦を除く)、兄が十両へ陥落した際や怪我に苦しんだ際、翔猿は公のインタビューで「兄の存在が一番の刺激。兄が頑張っているから自分も負けられない」と幾度も口にしてきました。血のつながった肉親が同じプロの世界で戦っているという強固な精神的支柱が、過酷な本場所を乗り越える原動力となっていることは間違いありません。