ヴィルヘルムの真骨頂を語る上で、青年時代の過酷な戦歴と先代「剣聖」テレシア・ヴァン・アストレアとの出会いは絶対に外せない。ルグニカ王国を揺るがした「亜人戦争」の渦中、名もなき下級貴族の三男坊だった彼は、己の剣の腕だけを頼りに戦場へ身を投じる荒れ狂う野獣のような少年だった。
花を愛し、戦いを嫌いながらも「剣聖の加護」という宿命を背負わされていたテレシア。二人が廃墟の広場で剣を交え、互いの孤独を埋めるように惹かれ合っていく過程は、残酷な戦時下において眩い光を放つ。やがて彼女の重荷を奪い去るため、ヴィルヘルムは御前試合でテレシアを打ち破り、「お前が剣を持つ理由は、俺が奪う」と告げて妻に迎えた。
しかし、幸福な時間は永遠には続かなかった。白鯨討伐戦において加護が突如として幼き孫へと移り変わり、テレシアは非業の死を遂げる。最愛の人を守りきれなかった自責の念こそが、彼を「剣鬼」という名の復讐者へと縛り付ける呪いとなったのだ。