緑豊かだったゴムの木が、冬に入った途端にバサバサと葉を落とし始めると、多くの愛好家は「病気ではないか」「枯れてしまったのではないか」と動揺します。しかし、この落葉現象の根底には、熱帯性の樹木が過酷な環境下で生き延びようとする植物生理学的な自己防衛反応が働いています。
気温が一定の閾値を下回ると、植物体内では「アブシシン酸」と呼ばれる植物ホルモンが急増します。このホルモンの指令によって、葉柄の付け根に「離層(りそう)」という特殊な細胞層が形成されます。低温によって根の活動が鈍り、水分を吸い上げる力が極端に落ちている状況下で、大きな葉から水分が蒸散し続けると、木全体の水分が枯渇して幹まで干からびてしまいます。つまりゴムの木は、自らの命を守るためにあえて葉を切り離し、水分の消費を極限まで抑える休眠モードへと移行しているのです。
さらに、気温の「急激な変化」もトリガーになります。初秋から徐々に寒さに慣らされた株はある程度の耐性を獲得しますが、昨日まで暖房で22℃あった部屋が寒波の夜に一気に4℃まで冷え込むような急変に見舞われると、細胞膜が物理的なダメージを受ける「低温障害(チル・インジュリー)」を発症します。この場合、葉が黄色に変色する間もなく、緑色のままポロポロと落ちてしまう現象が起こります。落葉は植物が発している明確な悲鳴であり、現在の環境が生死の境界線上にあることを示しています。