2026年の音楽ビジネスにおいて、最も興味深いパラドックスが起きている。アルゴリズムが個人の好みを完璧に予測し、ハイレゾ音源が空中に飛び交う現代において、アナログレコードの売上は15年連続で増加を記録し続けている。日本レコード協会の最新データによれば、国内盤アナログの生産実績はピーク時の数字を塗り替えつつある。
この現象を牽引しているのは、意外にもCD時代すら知らない20代の若者たちだ。「いつでも聴ける」環境は、皮肉にも「何一つ深く記憶に残らない」という感覚を生み出した。物理的なディスクをターンテーブルに乗せ、A面からB面へとひっくり返す一連の儀式。その不便さこそが、タイパ(タイムパフォーマンス)至上主義に対する静かな反逆として機能している。