近年、感染症研究の主役に躍り出たのが「マイクロバイオーム(微生物群)」の存在だ。特に鼻腔内や咽頭に存在する常在細菌叢の多様性が、ウイルスの定着を左右することが明らかになってきた。
健常な上気道マイクロバイオームを保持している人は、常在菌が粘膜表面を隙間なく覆っており、インフルエンザウイルスが物理的に付着するスペースを与えない。さらに、特定の善玉菌群は短鎖脂肪酸などの代謝産物を放出し、粘膜上皮細胞のバリア機能を常時強化している。
また、腸内環境と呼吸器免疫は「腸-肺軸(Gut-Lung Axis)」と呼ばれる神経・体液性のネットワークで密接に結びついている。腸内細菌が生成するシグナル分子が骨髄での免疫細胞の成熟を促し、結果として鼻粘膜の防御力を引き上げているのだ。