角替和枝さんの演技の原点を語る上で外せないのが、70年代半ばから巻き起こったつかこうへい劇団での活躍だ。当時の小劇場界は、圧倒的な言葉の連射と人間の感情を剥ぎ取るような熱気が渦巻いていた。その中心で彼女は、可憐さと狂気を同居させた圧倒的なヒロインを演じ切っていた。
舞台上に立つ彼女の一声は、劇場の雰囲気を一変させる力を持っていたという。長台詞を機関銃のように浴びせかけながらも、どこか切なさを漂わせる佇まい。当時を知る劇評家は「画面や客席を射抜くような鋭い眼光と、天真爛漫な笑顔のギャップが美しかった」と振り返る。